電車のホームで盲目の人とすれ違った。盲目の人はいつもしっかり前を向いている。次に見かけた時はギターを持ってたから「盲目じゃないんだ」と自分の中で訂正。出発後その人が車両に入ってきてギターを弾き始めた。そうか、目が見えなくてもギターは弾けるもんね。彼の歌は鉄板だらけの車両にいい感じにエコーし、適当に見過ごしていた外の風景も何か大切な一場面のように見えてくる。歌が終わってみんなが彼の差し出す空き缶に小銭を入れ始めた。私は2ペソ札二枚を通路側のボーに渡した。ボーが空き缶にそれを落とすと「ストッ」とほとんど音もなく、彼の手にも限りなく無に近い重量のそれが落ちた。彼はボーが何かを入れる気配には気づいてたけど、その「ストッ」の瞬間「エッ?」と戸惑ったのが分かった。そうか、目が見えないから小銭のチャリンは分かるけどお札じゃ入ったのかどうか分かんないし、他の人の何倍もあげたのに彼はこれが本当にお札で、いくらなのかも分からないのか。小銭を沢山渡した方が良かったね。
以前聞いた話で、盲目の人が大人になってから(手術で)初めて目が見えるようになったんだって。その人がスープを飲んでいる時「中に動くものがある」と言うんだけど実際は何もない。「何か鉄のような動くもの」。それは天井からぶらさがっているファンがスープの中に映ってただけだったんだって。目が見えないというのは本当に想像するのが不可能だ。
2008/02/22
見える、という事
2008/02/21
スパイ
仕事会議3回目。1回目は家のジャッキに電話2台つなげてみたけど音が小さくなっちゃって不採用。2回目(先週)はSkypeを使ってみたけど音が反響しちゃって不評。という事で今週はBoは家から、私は近所の公衆電話から会議に参加。普通の公衆電話だと屋外だからうるさい上に立ったままなので、ブースに入って後払い方式の電話サービスセンターへ。ノートを置けるカウンターもあるし、即興オフィスです。音もいいし他の参加者は私がこんな小部屋から電話してるとは想像もつかないでしょう。大通りを避けて選んだ場所だったけどやっぱり街は何があるか分からない。突如ものすごい音のパトカー、救急車が通りすぎる。しかもラッシュ時だからかなかなかいなくなってくれない。一生懸命電話口をふさいだけどやっぱりばれたらしい。「革命でも起こってるのか?」と建築家が言う。「前から思ってたけどやっぱり君たち二人はCIAのスパイなんじゃないのか?」えぇぇー?確かに特にBoは去年出張が多くて(韓国、イギリス、オランダ、ポーランド、モロッコ、スペイン等)いろんな所から電話会議に参加してるけどさ、そう来るとはね、、、ばれましたか。
左:オフィスデスク
右:オフィスからの風景。おじいちゃんが孫にアイスを買っている。
2008/02/18
2008/02/10
選べない
昨日目を付けておいたエスプレッソメーカーを購入。ところがぁ!その次に入ったお店で赤いの発見!!新しいの買って15分もしてないのに。試しに元のお店に戻って返品できるか聞いたらダメー。他の商品との引き換えならいいらしい。アメリカだったら間違いなく文句なしですぐ払い戻ししてくれます。こういう点はアメリカの方が買い物しやすい。逆に買い物しやすすぎて破産する人が多いというのも事実です。他に欲しいものはないし、悩みに悩み、赤い方も購入。アホです。両方とも100ペソくらいで安いんだけど、エスプレッソメーカー2つもある家なんてないでしょう。しかもはじめに買った方も全然悪くないのに。全く違うデザインをどちらか一方に選べなかったというわけ。
蛇口が欲しい
楽しみにしていたSan Telmoの蚤の市へ。屋内の部を一通り物色してひと休憩。朝からビールの人もいます。Boはおつまみセットを頼んだつもりが山盛りのチーズが出てきた。スペイン語の勉強、必要です。私はマテ茶を頼んだら期待していた鉄のストローではなく、お茶パックで出てきました。ちょっと残念だけど、あとでスーパーで買う時すぐ分かったから良かった。肉食の文化、このマテ茶でビタミンなどを採っているらしい。今後の肉食生活に不安な私はこのマテちゃんを信じて飲み続けるしかないようです。
マーケットにはお店がたくさん。主に銀細工、グラス、アクセサリー。又来れるし、と思っていたからか何も買えませんでした。あと、やっぱり買って帰っても家もないし、倉庫に荷物ありすぎだし、そんなモノ(食器セットとか、蛇口とか、古い住所のナンバープレートとか)いらないでしょう、っていうモノが欲しかったの、、、そう。全然いらない!でも素敵。モロッコでは鹿の頭の形の噴水口買ったもんね。値切ったおじさんにちなんでアブドゥルと命名。設置できるのはいつか分からないのでそれまで本棚に寝転んでます。
2008/02/09
フルコースおやつ
歩きに歩いて繁華街へ。ブエノスアイレス一と言われるショッピングモールへぷらっと入ると、商業建築魂に火がついた、かは知らないけど、Boが空間分析、写真撮影で大忙し。もうJerde(前職)やめたんだからさー。まあ、モールへ行って旦那の方が興味津々というは逆よりはいいのかなあ。
古くていい感じのカフェへ。中は広々としていて’古き良き時代’には賑わっていたのが伝わってくる(勝手に想像)。ちょっと腹ごしらえ、と思ってコーヒーとケーキを頼もうとするとこれ又’古き良き’ウェイターが二人用セットを勧めている模様。セットで30ペソ、1000円くらいか。ちょっと贅沢だけどいっか、と思いきや、超ゴージャスなフルコースおやつが運ばれてきました。おもわずスケッチブックに記録。
コーヒー、紅茶、あたたかいミルク、サンドイッチ(4)クロワッサン(4)にバターとマーマレード、パウンドケーキ(2)お好みのミニケーキ(2)ちゃんと残りはお持ち帰りにしてくれました。
「古き良きカフェ」色はまだ塗り途中
お墓都市
有名なレコレータ墓地へ。行く途中(って言うか墓地の地下??)に大きなショールームがあって、シンクやシャワーヘッドなど最近仕事で探していたのもがいろいろ揃っていて、ついつい真剣に見てしまう。「こういう蛇口はうまく水が通るのかな」とか「タイルが安い」とか、買う訳でもないのにねえ。
そして地上に上がって墓地へ。なんだこりゃ、一つ一つのお墓がドデカイ、というよりビル?小人になった気持ちで見上げるとまさにミニ都市です。お墓のデザインもいろいろで建築物っぽいのから彫刻みたいの、金庫みたいの、ブティックみたいの、森みたいの、などなど。そして中をのぞくと、うっ、お棺が。お墓という事を忘れていた。中には複数のお棺があったり、新しいのだと写真があったり、なぜか地下へ続く階段やはしごがあったり。こ、こわいよー。でもね、お化けもこんな小都市に住めたら楽しいかも。「お宅ゴージャスねー」「あらそちらのガラスドアこそ流行のものね」なんて。ちなみに私は幅が狭くて高くそびえ立つ白い漆喰のと、上から木が生えてるのが好みでした。
左:手前がお墓で後ろが本当の街 右:お墓都市の街角に立つ私
この後公園を通って高級ブティック街へ。この公園の木がめちゃでかい。街中にこんなスケールのものがあっていいんですか。排気ガスや下水に負けずコンクリに固められた土地なのにエライのお。
2008/02/08
みんなのもの
Palermoへ。ブエノスアイレス一の‘オシャレ’エリアらしいけど、中心エリアは小さく、道を数本離れると店はまばらになる。とは言っても金曜、メインスクエアにはレストランが何軒もあってたくさんの人が屋外テーブルでビールを飲んだりおしゃべりをしたりしている。この、店からあふれ出ても飲む人々の光景はちょっとロンドンに似ている。
メインスクエアって書いたけど、実は交差点がround about になっているだけで、その中央がメインスクエア、それを迂回する道に沿ってレストランがあるというだけのこと。でもこういう小さな道路の変化が生み出す空間というのは、地図で見たり、機能や効率を優先して計画したりするのより実はずっと大きなインパクトがあると思う。ここはどうやってできたんだろう。一度しっかり碁盤目状にデザインされた道を後から変えるのはむずかしい。あとでもっと大きな公園や広場を見て思ったんだけど、昔は土地というのはみんなのもので、そこにだんだんいろいろな物が建てられ、土地が分けられ、一度小さくなってしまった土地をもとのサイズに戻すのは難しい。たまに高速道路や空港の拡張に伴って強制立ち退き、みたいな事を聞くけど、それだって大変な労力と葛藤の結果。だから国立公園とか海とか、近所の小さな公園とかって大切にしないといけないよねー。みんなが維持していかないと、いつか誰のものでもなくなって、そうするといつか誰かの物になっちゃうんだぞ。
真ん中の小さな緑の点が今回の話題の’メインスクエア’です
初仕事
今日はアメリカとの電話会議の日です。建設中の住宅のクライアント、現場の大工さん、建築家と私たち(今回のプロジェクトは建築家にスタッフがいなかった為私とBoが下請けで全ての図面を制作をしています)の4方向会議。今までもずっとそうだったので、私たちがロスにいようが、ブエノスアイレスにいようが関係なし。それでもやっぱり少し緊張。大量に買い込んだテレホンカードを横に会議が始まります。昨日せっかく買った予備の電話は、2台同時にジャッキにつなげると聞こえが悪いという事で私は途中で退散。スピーカーフォンは高かったから買わなかったの。それでも会議は順調。一時間20分ほどで終了(途中で一度テレカが切れたから覚えてる)Boなんてむしろ距離の差を感じさせないためにあえて必要もない世間話なんかもして誇らし気。とりあえず仕事の環境は大丈夫みたい。良かった良かった。
(下:現場の写真、ちなみに敷地はユタ州でこの時期は極寒です)
2008/02/07
アイス素敵セット
はす向かいのアイス屋さんへ。アメリカだったらどこへ行ってもどんな物でも絶対一番小さいサイズでいいんだけど、ここの小さいコーン、めちゃ小さいです。それでも「毎日来られるし、倹約、倹約」と思って一番小さいのを注文。アイス一つでも「ホニャララ pro favor (お願いします)」と言うのがやっと。これでメニューが壁になかったらアウトでしょう。こんなちっちゃなコーンなのにちゃんと2種類選ばせてくれました。これなら十分だ。
席に着いて皆さんの席を見回すと、なに、コーヒーにスパークリングウォーターにミニアイスがついてくるの?なんて素敵なセットなんでしょう。おじいちゃんもギャルもみんなそうしてます。するとね、するとね、Boが頼んだエスプレッソも同じセットとなって運ばれてきました。こ、これサービスなのか。こんなサービス日本で出したら大人気になっちゃうかな。でもちょっと考えると、どうせ食べないならもったいないとか、アイスの味を指定する人とか、ご飯前なのに、とかいろいろな理由でうまくいかないかも。私はうれしいけど。
新居 for1ヶ月
朝ホテルに荷物を置いたままとりあえず今日から住む事になるアパートへ鍵の受け取りと契約書のサインに行く。ホテルはロス出発数時間前に適当にウェブで予約したにもかかわらず偶然アパートまで歩ける距離。とは行っても地下鉄駅2つ分だから結構距離はあるんだけど、せっかくの初日、地下に潜るよりは街を偵察、という事で徒歩。道は排気ガスとゴミが多くあまりきれいではない。医療器具の店が何件か続き、背骨の模型、入れ歯の型、奇妙な形のはさみ風用具がならんでいる。ふむふむ、アルゼンチン人も病気になるもんね。後で分かったけど、その時通った道はたまたま運搬トラックなどの多い道で、他の道はそんなに汚くなかった。
待っててくれた大屋さんは、若い。勝手におじいちゃんを想像してたのに、ワイシャツをきちんと着たこぎれいな青年でした。Boが言うには、5、6年前ペソが大暴落した時にお金を持っていた人たちが土地や不動産をたくさん買い込み、だから若くて賃貸用のビルなんかを持ってる人は珍しくないんだって。へー。これから一ヶ月よろしくお願いします。
さて、ホテルに戻るとスーツケースがちゃんと届いてました。今回はタクシーでアパートへとんぼ返り。午後は家/オフィスのセットアップに東奔西走、変圧器、アダプター、電話(二人で電話会議に出られる用)、テレホンカード、プリント用紙などを購入。
これが新居からの眺めです。ちなみに目の前のアパートは27階立て。見上げるとひっくり返りそうになる。
2008/02/06
夜の一方通行
冷房のきいたタクシーの窓ごしに新しい町を確かめようとするんだけど街は意外と暗く、たまに交差点のうす暗いバーの前にぽつぽつ人がいるのみ。しかもほぼ全ての道が一通で、この夜の一通の「引き返せない感」がちょっと怖い。絶対に止まってはいけない、という静かな脅迫感に迫られる。
そう言えばマラケシュに着いたのもミラノに着いたのも夜だった。マラケシュでは蛇使いのいる屋台広場をスーツケースをひいて横断し、肩幅いっぱいの小道を通ってホテルに着いた。ミラノではシャッターの閉め切られた凍える灰色の街を通って駅前の安宿にたどり着いた。そこのエレベーターはそれまで経験したことのない驚きの小ささだった。
夜に新しい土地に到着すると、そこに住む人たちの知らないうちにそっと街に忍び込んで、朝何事もなかった様に一緒に起きらる感じがして楽しい。
南半球まで爆睡
そんな訳で機内は爆睡。途中パナマでの乗り換え以外はほとんど記憶がない。一度目を覚ました時隣に座っている青年が数枚の写真を手に涙を拭いていた。おー、失恋でもしたか、と思いきやおもむろにアクション系DVDを持参のラップトップで観始めた。気の切り替えが早い。後で聞くとコルドバの大学へ一年間留学とのこと。なるほど、私にもそんな時代があったなぁ、と一人郷愁に浸る私。「この一年は今後の君の人生に大きな影響を与える事になるんだからしっかりね」、とは言わなかったけどさ、そう思ったの。空港到着後は同じプログラムで来ているという青年と二人揃って税関を通っていきました。若者がんばれ!
さて、私たちと言えば、大量の荷物に埋もれ全然気づかなかったけどBoが言うには「荷物が足りない」。え?本当だ。すると、もの凄く小柄でテキパキとした制服の女性がやってきて、スーツケースは明日到着との事。飛行機換えてないのに、きっとパナマで降ろされちゃったのね。とりあえず明日ホテルに届けてくれるとは言われたけど。仕事の資料がいっぱい入ってるのに心配だよ。それでもなんとか気を取り直してホテルへ。一般の呼び込みタクシーの入れないゲート出口直前でハイヤーを頼めたので楽ちん。唯一焦ったのは女性運転士さん、高速で携帯メール書くのやめて。。。